Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
|
Research Abstract |
嫌気性微生物であるビフィズス菌や乳酸菌の乳酸発酵過程では,lactate dehydrogenase(LDH)によりpyruvateでNAD^+再生している.NAD^+再生のための新規な電子移動過程の導入を目的として,細胞外quinone類による細胞内NADHの酸化を検討した.その結果,細胞内diaphorase(DI)活性により,NADHからquinoneへの迅速な電子移動が進行し,生成したquinolはO_2,H_2O_2,Fe(CN)_6^<3->等多種の細胞外電子受容体に電子を渡すことを明らかにした.この外因性電子移動過程の反応速度は,quinoneの酸化還元電位と細胞膜透過性,およびDI活性とLDH活性の相対的強度で決定されることも明らかにした.特にプロピオン酸菌由来の2-amino-3-carboxy-1,4-naphthoquinone(ACNQ)は本電子移動の良好なメディエータとなる.このため,ごく微量(nMオーダー)での添加により,ドミノ的に代謝経路が変わる.たとえば,lactate生成は減少し,通常では観測出来ないpyruvateが生成される.さらに,ビフィズス菌ではこの外因性NADH酸化過程の導入により,acetyl CoAがNADH酸化(アルコール発酵)に使われることなく,ATP生成に利用されるということがわかった.ACNQはビフィズス菌の増殖促進因子として発見されたが,この作用機構も本モデルでよく説明できる.また,本モデルは,微生物による物質生産制御の新しい方法として利用できる可能性がある.ビフィズス菌の増殖促進因子としては,ACNQの他,1,4-dihydroxy-naphthoic acid DHNA)も同様の生理作用が報告されている.DHNAの酸化還元および酸解離特性を調べた結果,ACNAと同一の作用機作での生理作用を説明することが困難であることがわかった.そこで,DHNAの酸化的アンモニア付加反応によりACNQが生成するという作業仮説をたて,電気化学法,分光法等によりその仮説を証明した.さらにACNQの新規合成法を提唱した.一方,DHNAは細胞内のArg等のアミン類とも反応し,ACNQ誘導体が生成することを電気化学的に証明した.このようなアミン付加体生成によりDHNAはより酸化還元電位が負にシフトし,また細胞内での保持力が高まり,細胞外電子移動反応のメディエータとして有効に機能することが示唆された.
|