Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
内分泌攪乱物質によるヒトへの悪影響の用量-反応関係が科学的に確認されない現状において、その影響を定量的に評価するための枠組みを、化学物質による発癌リスクを評価する枠組みを援用して構成した。最終的な評価対象物質であるビスフェノール-A(BPA)の放射性標識化合物を妊娠日齢の異なるICRマウスに投与し、その体内分布ならびに胎児への移行・蓄積を把握するための基礎実験を実施し、マウスPBPKモデルを構築するための基礎データを収集した。BPAは胎盤を経由して速やかに胎児に移行すること、BPAのグルクロン酸包合体への代謝速度は、母胎中に比べて胎児中では小さく、BPAは胎児中に蓄積する傾向があること、胎児中の臓器・組織では特に生殖器・脳への蓄積割合が母胎中に比べて相対的に大きいこと、腸肝循環の効果が無視できないこと等を確認した。また、妊娠日齢15日目を境に臓器・組織/血液分配係数に変化が見られることを確認し、良好なマウスBPA-PBPKモデルを得た。さらに、生理学的パラメータや生化学的パラメータをヒトに変換し、ヒトBPA-PBPKモデルを得た。BPAの平均的な日本人に対する経口曝露量が1日3回の食事を介して摂取されるとして、構築したヒトBPA-PBPKモデルにより母体および胎児中のBPA濃度を推定した。推定結果は臨床データに比較して2〜3オーダー程度の過小評価になった。臨床的に把握された血液中BPA濃度を用いてヒト小脳細胞やセルトリ細胞の生存率低下を推定した。BPAの曝露により発現が促進・抑制される遺伝子を特定し、その用量反応特性を確認する計画研究の他班の成果を得て、ヒトとマウスに共通して誘発される遺伝子の発現量変化をバイオマーカーとして利用する可能性について検討した。
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