ニューロプシン遺伝子欠損マウスにおける細胞接着因子の変化
Project/Area Number |
13041044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塩坂 貞夫 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90127233)
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Project Period (FY) |
2001
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Keywords | ニューロプシン / L1CAM / 海馬 / シナプス / シャーファー側枝 |
Research Abstract |
我々は免疫組織科学により世界で初めてL1CAM免疫反応産物を光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて観察することに成功した。L1CAMは大脳皮質4-5層にベルト状に、脳梁の一部の交連線維、および海馬のStratum Radiatum, Lac unosum moleculareにきわめて明瞭な発現を見いだした。またそのほか、嗅球、淡蒼球、黒質など脳の広い領域に分布することを明らかとした。L1CAM免疫反応産物は前シナプス膜にそのほとんどが見いだされ、また交連線維など神経束の電顕観察から軸索線維内にも豊富に認められた。しかし、L1CAM陽性の軸索線維はすべてがノンミエリン線維であった。海馬のStratum RadiatumについてはL1CAM免疫反応産物は明瞭なシナプスを形成し、すべてシナプス前膜にのみ観察された。 他方、ニューロプシンの基質タンパク質を同定することを試みた。2次元電気泳動法やウェスターンブロットにより、リコンビナントニューロプシンがL1CAMを特異的に細胞外ドメインの一カ所にて、またきわめて短時間に切断することを見いだした。ニューロプシンタンパク質を海馬スライス標本にバスアプライすることによってLTPを濃度依存的に調節することから、ニューロプシンがLTP誘導刺激とともに活性化され、L1CAMを速やかに切断するとの仮説をたて、海馬標本に神経脱分極薬(4AP、NMDA)を適用し、神経細胞が脱分極する事を観察し、それに応じたニューロプシンの活性化と、L1CAMの特異的切断が起こるかどうかを検討した。その結果、神経脱分極薬10分間の適用とその後の洗浄によって、海馬神経が興奮すると同時に、ニューロプシンの活性化が起こること、その活性化に応じてL1CAMの特異的切断が起こることを証明した。このことは神経活動依存的にシャーファー側枝シナプスでのL1CAM切断が起こり、それがLTPの調節に大きな影響を与えることを示している。我々の生化学的実験によりニューロプシンによって200kDの膜結合型L1CAMが180kD遊離型L1CAMに変換されることが明らかとなっている。このLTP誘導による200KD→180KD変換はニューロプシンKOマウスでは観察することができない。また、4AP, NMDA添加時、ニューロプシン中和抗体を投与する事によっても200KD→180KD変換を完全にブロックする事ができる。また、200KD→180KD変換はNMDA阻害薬(APV)によって完全にブロックすることができる。以上のことを総合すると、シャーファー側枝シナプスLTPの発現においてNMDA受容体依存的なシナプス後ニューロンの活性化が起こり、細胞内シグナリングを経て、ニューロプシン活性化酵素を活性化し、これが不活型ニューロプシンを活性化する。活性型ニューロプシンは細胞外においてシナプス前膜に存在するL1CAMを速やかに切断し、これによってシャーファー側枝シナプスLTPを調節する。このニューロプシン-L1CAM依存的LTP調節機構は後シナプスからの逆行性シグナリングの一つと考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)