Research Abstract |
胚発生の開始には,卵形成の過程で合成され卵内に貯蓄されている母性因子が重要である.これら母性因子の多くは,mRNAとして卵内の特定の領域に局在化し,局在化した領域でのみ時期特異的に翻訳され機能する.このような母性RNAの時間的・空間的制御には,母性RNAとRNP複合体を形成するタンパク質が重要である.しかし,母性RNP複合体を構成するタンパク質やその機能ついては不明である. 私たちは,ショウジョウバエの卵形成過程において,Me31Bが,母性RNAの輸送と翻訳とを連携させている,RNP複合体の構成タンパク質であることを明らかにしてきた.本研究では,Me31B複合体を構成する新規タンパク質の同定を行った. まず,抗Me31B抗体を用いた免疫沈降を行い,共沈するタンパク質についてアミノ酸シーケンスを解析した.その結果,新規タンパク質,CG10686を同定した.さらに,特異的抗体を作成し,免疫組織化学染色を行った結果,CG10686はMe31B複合体の新規構成タンパク質であることを明らかにした.CG10686は,配列中にRNA結合モチーフの1つであるRGG配列を持つことから,卵形成過程において母性RNAと直接結合して機能していると考えられた. CG10686とよく似たタンパク質は,酵母,植物,線虫,マウス,ヒトなどおそらくすべての真核生物に存在している.特にイモリにおいては,CG10686ホモログであるRAP55が,Me31Bホモログと同様に,stored maternal RNP particleの構成タンパク質であることが報告されている.以上の結果は,ショウジョウバエMe31B複合体と両生類卵母細胞内のstored maternal RNP particleとが,機能の点でも構成成分の点でも,進化的に保存されていることを予想させた.
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