新しい抗ウイルス戦略をめざしたヘルペスウイルス遺伝子発現制御因子の解析
Project/Area Number |
13226030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川口 寧 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (60292984)
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Project Period (FY) |
2001
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
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Keywords | 前初期ウイルス制御因子 / プロテインキナーゼ / HSV / EBV |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトに様々な疾患を引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV)およびEpstein-Barrウイルス(EBV)感染直後に発現する制御因子およびウイルス特異プロテインキナーゼの機能発現機構を、主に宿主細胞機構との相互作用の観点より解析し、新たな抗ウイルス剤開発や抗ウイルス戦略構築に向けての基礎的な知見を蓄積することにある。本年度の成果は以下の通りである。 (i)HSV感染直後に発現する遺伝子発現制御因子ICP0が相互作用するさらなる宿主細胞因子の同定を試みた。その結果、ICP0が宿主転写因子BMAL1と相互作用することを明らかにした。また、ICP0とBMAL1との相互作用は、GST pull down法によっても確認された。さらに、レポーターアッセイの結果、ICP0はBMAL1と協調してBMAL1特異的な転写を活性化することが明らかになった。以上の結果は、ICP0がBMAL1と相互作用することによって、遺伝子発現を制御していることを示唆している。 (ii)EBVの制御因子EBNA-LPはEBVがB細胞に感染した際に最初に発現する制御因子であり、EBVによるB細胞の不死化に大きな役割を果たしているco-acitvatorであることが知られている。本年度は、EBNA-LPのco-activatorとしての機能発現機構の解明を試みた。まず、宿主細胞機構によるEBNA-LPの主要リン酸化部位を解析し、35番目のセリン残基であることを明らかにした。このセリン残基をアラニンに置換した変異体はco-activator機能を消失したが、グルタミン酸に置換した変異体は野生株と同等のco-activator機能を有していた。次に、EBNA-LPの核マトリックス局在部位に必須な部位を同定し、それにアラニン置換を施した変異体を作製した。この変異体は、核マトリックスにも核にも局在せず、また、co-activator機能も消失していた。以上の結果は、EBNA-LPのco-activatorとしての機能発現には、宿主キナーゼによるリン酸化および宿主機構による核または核マトリックスへの局在が重要であることを示している。 (iii)EBVはそのゲノムにプロテインキナーゼ(BGLF4)をコードしてる。周知のように、ウイルス特異酵素は、抗ウイルス剤の理想的な標的である。本年度においては、BGLF4をGSTおよびHis tagと融合させる形で発現する組み換えバキュウロウイルスを作製し、簡便かつ大量に機能的なBGLF4を精製する系を確立した。また、BGLF4は自己リン酸能を有し、宿主の翻訳因子EF-1δのリン酸化に関与していることを明らかにした。以上の結果は、BGLF4が宿主因子を修飾することによって、EBVの増殖に寄与していることを示唆している。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)