新たな三日熱マラリア伝搬阻止ワクチン抗原を同定するため、本年度は生殖母体表面蛋白の遺伝子クローニングを行った。熱帯熱マラリア原虫生殖母体表面蛋白であるPfs48のアミノ酸配列を用いて三日熱マラリア原虫ゲノムシーケンスデータベースをBLAST検索した。その結果、アミノ酸配列でPfs48と比較的相同性の高い2つの短いDNA断片が得られた。この情報を基に、三日熱マラリア原虫実験室内株からPCRによりpvs48遺伝子の全長を増幅した。またpvs48の近傍を探索した結果、熱帯熱マラリア原虫で報告されたのと同様pvs48の約3kb上流にpvs47と思われる遺伝子が見出された。タイ国内のマラリア流行地において三日熱マラリア患者の同意を得た後採血し、分離精製した生殖母体からRNAを抽出した。また、同一患者血液から赤内型原虫を分離した後in vitro培養したオーキネートを作成し、それぞれからもRNAを抽出した。それらを用いてRT-PCRを行いpvs47の転写を確認した。その結果、Pvs47は生殖母体のステージにのみ転写されており、早期の有性生殖ステージ原虫に特異的と考えられた。またこのcDNAをクローン化した後塩基配列を解析した結果、pvs47の遺伝子はイントロンを含んでいないことが判明した。Pvs47の塩基配列から予想される433残基のアミノ酸配列の特徴としては、N末端にシグナル配列を持ち、C末端にはGPIアンカーと思われる短い疎水性領域が存在していた。またそれらの間には、システインに富む領域が存在し、Pfs47との構造比較から6個の保存的なシステインが存在する「6-Cys Domain」、2個の保存的なシステインが存在する「2-Cys Domain」、6個の保存的なシステインが存在する「6-Cys Domain」で構成されていた。これらの構造は、マラリア原虫に特異的な構造であった。
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