1.これまでに組み換えBCGのシステムを用いてPlasmodium falciparumのMSP1のC末端部をコードする遺伝子を組み入れた組み換えBCG菌を作製し、BCG菌からのMSP1-Cの分泌を確認した。またその構造は本来の立体構造に近い構造をとっていることも分かった。しかしながら分泌量に関してはまだ十分ではないことから、この抗原により誘導される防御免疫を高めるのは難しいものと考えられた。今回、発現量を増加させる対策として、MSP1-Cの遺伝子のコドンを抗酸菌型のコドンに適合させた人工の合成遺伝子を作製した。この合成遺伝子を用いて上記と同様にして組み換えBCG菌を作製し、BCGからのMSP1-Cの分泌量を検討したところ分泌量が上昇しているのが確認された。またMSP1-Cの発現領域を修正することによりBCGからの分泌量をさらに増加させることができた。 2.SERA(SE47')は我々の発現システムを用いた場合、大量分泌系には適さない可能性が示されたことから、今回ストレス蛋白質であるHSP60及びα-crystallin like proteinのプロモーターを用いて菌体内の発現を目指した新しいベクターの構築を行い、BCGを形質転換した。得られた組み換えBCG菌からのSE47'の発現を検討したところ、BCG菌体内でのSE47'の発現が確認された。菌体内での発現はα-crystallin like proteinのプロモーターを用いた場合においてより多く発現しているのが確認された。次に、SE47'の発現が確認された組み換えBCG菌をマウスに投与し、抗体産生誘導能について検討した初回免疫後4週、8週、21週後の抗血清を用いて抗SE47'抗体価をABC-ELISA法で測定したところ、抗体価の上昇は認められなかった。
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