Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
亜急性硬化性全脳炎(Subacute sclerotic panencephalitis ; SSPE)は麻疹ウイルス(MV)の慢性持続性感染で、inosiplexやインターフェロンなどの抗ウイルス剤・免疫賦活剤による症状改善がある程度望めるものの、進行を抑えることはできず、一度罹患すると最終的に植物状態・死にいたる予後不良な疾患である。現在、SSPEにおいてMVが中枢神経系に持続感染を引き起こす機序は解明されていない。私たちはSSEP姉弟例を経験し、MV持続感染の機序に遺伝的素因が関わっていないかと考え、MV感染のレセプターとして作用するCD46に注目した。CD46はmembrane cofactor protein(MCP)で従来、補体活性を制御する因子である。MVはCD46の細胞膜外ドメインに接合し感染するが、その際CD46はdownregulationを起こす。このCD46のdownregulationは細胞内シグナル伝達系を介しMHC class I複合体の発現を減少させるとの報告があり、その結果MV感染細胞は細胞性免疫の監視機構から逃れ、MVの持続感染が成立する可能性がある。今回私たちはSSPE患者で、CD46遺伝子の細胞膜外ドメインをコードするエクソン1からエクソン4に変異や多型がないか検討した。SSPE患者6人の末梢血液リンパ球からRNAを抽出、RT-PCR法でエクソン1からエクソン6までを3つに分け増幅、直接シークエンス法で塩基配列を決定した。その結果、SSPE患者6人ではいずれのエクソンにも変異は認めず、CD46の細胞膜外ドメインは、SSPE発症のうえでは関連性が低いと考えた。しかしCD46の細胞内シグナル伝達には細胞内ドメインが重要と考えられ、次はSSPE患者でCD46の全領域をRT-PCR法およびgenomic PCR法で解析する予定である。