Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成14年度における調査研究は、平成13年度よりはじめられたこのプロジェクトの最初の成果を、「初期映画をめぐる文学的想像力」((『メディア文化の権力作用』(伊藤守編、せりか書房、2002年5月)として活字媒体に発表する準備、発表、そしてそのレビューを各方面から受けるということが中心となった。日本における初期映画をめぐる文学者の理解を中心に論じた「初期映画をめぐる文学的想像力」はそれなりの評価をされたが、吉本光宏助教授(現ニューヨーク大学)をはじめ国内外の文化研究者にレビューを受けた際、二〇世紀初頭においては近代化のシンボルとして圧倒的な存在感を持っていた映画という文化現象のありようを捉えるにはあまりにも一面的すぎるという批判をはじめ、関連資料の不十分さなどの指摘なども受けた。そこで、その後もレビューを繰り返し、今後、どのような仕方でさらに調査研究を展開できるかという方向で、理論的な問題点や欧米の文化研究の成果などについてさまざまな方面からアドバイスを受けた。また、芦屋市の谷崎潤一郎記念館をはじめ、これまで調査をしていなかったアーカイブにおいても調査をおこない、関連資料の調査もすすめ、新しい展開を模索した。そのなかで新しく認識された調査研究の方向性として、初期映画については、映画が継承したそれ以前の視覚文化からのアプローチだけではなく、初期映画を取り囲んでいた文化状況-それは、必ずしも視覚文化にかぎらない-の詳細な研究が必要であるということ、しかも、単なる背景状況としての諸文化という観点ではなく、映画という文化実践が、同時代において対抗せざるをえなかった他の文化実践との関係性を浮かび上がらせることの重要性が認識された。それらを踏まえた調査研究の新たな展開については、現在、論文を構想中であるが、現段階でも、その準備ノートのようなかたちでいくつかの小論を発表しはじめいているという状態である。
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