Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2002: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,不完全競争論にともに着目しているカレツキアンとニュー・ケインジアンの対比から,ケインズ的なマクロ経済学の展開を検討することである。とくに,所得分配の関係から彫琢されたカレツキの不完全競争論に着目し,そこでのケインズ的な有効需要論のロジックに注目することが本研究の特色である。 昨年度は主として,市場機構と所得分配との関係を題材に,カレツキの議論の含意を明らかにしてきたが,本年度は,より直裁に不完全競争論を援用しながらマクロ経済学を展開しているニュー・ケインジアンのモデルをとりあげ,カレツキの不完全競争論の観点からそれらを再検討した。研究論文,池田(2002)ならびにIKEDA(2003)はこうした観点から,マクロ経済政策,とりわけ総需要管理的な財政政策について検討したものである。 これらの研究において得られた新たな知見の一つは,財政政策は,所得再分配を通じておこなわれた場合,伝統的ケインズ経済学やニュー・ケインジアンの議論が想定しているより高い政策効果を発揮する可能性がある,ということである。さらに,こうした所得再分配の観点から財政政策を捉えた場合,ニュー・ケインジアンが指摘する,伝統的な財政政策の財源負担による厚生水準へのマイナスの影響は必ずしも必然的なものではないこと,むしろ,そのマイナスの影響は「同質的な代表的家計」というモデル上の特定の仮定に依存している可能性があること,が明らかにされた。いうまでもなく,これらの新たな知見は,カレツキ的な所得分配と有効需要の相互作用のメカニズムに着目したが故に得られたものである。したがって,今後もまたこうした観点からマクロ経済学の研究を続ける予定である。
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