Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本年度は,九州と琉球諸島との貝形虫群集の違いを明確にするために,7月末に鹿児島大学の総合研究博物館において,南九州の第四系に関する情報収集を行い,その後鹿児島県種子島において,現世表層堆積物および更新統増田層からの化石試料の採取を行った.現世調査は種子島の西側,西之表地区の種子島港と東側熊野浦で行い,合計24試料採取した.いずれも湾内の水深はほとんど10m以浅であり,堆積物は細粒砂から泥質砂である.結果として,多数の貝形虫類が抽出され,その中でも多いタクサはLoxoconcha, Aurila, Callistocythereなどの砂底から海藻周辺砂底種で,種レベルでも西南日本にごく普通に生息している沿岸群集との共通性が高いことがわかった.増田層については種子島北西部形之山地区と南西部梶潟地区で調査を行った.前者については風化が激しく,貝形虫化石の産出を期待できるような地層は存在しなかった.後者に関しては露頭が少ないながらも多くの貝形虫化石が産出し,それらは暖流沿岸域の砂底種が中心で,これらも現在の種子島周辺海域の群集と共通性が高いことがわかった.次に,中国内湾域の貝形虫群集と日本のそれらとを比較検討するために,9月に中国上海市の同済大学および上海市自然史博物館において,分類学的検討と,各地域間における貝形虫群集解析を行った.結果として,中国北部渤海・東シナ海の群集は九州以北の群集と共通性が高く,対馬海峡を経由した種の移動の結果であることが分かった.中国中部については琉球諸島と,中国南部に関しては東南アジアの群集との共通性が高いことを群集解析によって定量的に表現することが出来た.2年間の成果をまとめると,現在,九州以北と琉球諸島では内湾沿岸群集に違いが見られること.日本の内湾性貝形虫には対馬海峡を経由したものとトカラ海峡を経由したものがあり,前者のうち,Sinocytheridea属は日本での生息域が極めて減少したが,その他の多くは現在日本全国で普遍的に見られ,後者については,中・後期更新世にはNeomonoceratina属をはじめ,日本全国の閉鎖的内湾で大繁栄したにもかかわらず,現在では琉球諸島や中国南部に限られていることが示唆された.
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