Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2001: ¥100,000 (Direct Cost: ¥100,000)
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Research Abstract |
本研究においては13年度から14年度を通じて,流体力学系の確率密度関数(PDF)を扱うための数学的枠組みを提案し,高階確率密度関数の概念を世界で初めて導入すると同時に,これらの方程式を数値的に扱うための基本的検討を行った. まず初年度には流体力学系の状態(位相)空間が無限次元空間であることを考慮し,無限次元形式による外積代数により流体力学系のPDFの輸送方程式を導出方法を提案した.これは従来のPopeらの導出法の問題点を修正したものである.この際方程式の有する一般座標変換不変性により2点,もしくは多点相関の確率密度関数の方程式の導出に成功した.これらの方法の一般化により確率密度関数の確率密度関数である高階確率密度関数の概念を提唱し,この方程式を初めて導出することに成功した.このような概念は確率密度汎関数と誤解されることもあるが,確率密度汎関数は2階の確率密度関数をある種アンサンブル平均化したものに相当しており,高階確率密度関数の概念はこの確率密度汎関数よりも遙かに一般性が高い. 以上の議論はあくまで数学的で抽象空間上の議論であるが,このような概念の必要性を主張するためには数値的な議論が不可欠である.そこで次年度ではこのような確率密度関数を数値的に扱うための計算法について検討した.無限次元空間上の方程式の有限次元化は重要な問題であるが,本研究では写像完結近似のようなモデル化に頼らず,スペクトル法と同じく高波数成分の変動を除去する形の有限次元化を考えた.このような近似の下では方程式系は容易に有限次元化され,結果的に有限次元常微分方程式系を扱うことに帰着する.本研究ではそのような常微分方程式の例としてLorentzモデルとRosslerモデルの確率密度関数(正確には確率測度)の数値計算を行った.一般に常微分方程式系の不変集合上で定義されるエントロピー量は意外にも時間的に線形的に増加することが知られているが,本研究では不変測度上で定義されるより一般的な情報量を定義し,それがすべて線形的に増加することを理論的に示した上で,数値的にこの事実を確認した.この情報量は時間的に統合と分化の傾向を示すことが理論的に予測されるが,現在の所分化の傾向を確認したのみで統合の現象は確認できていない.本研究ではこれらの考察を通じて得た数値計算手法を用いて流体力学系の確率密度関数を扱うことのできる感触を得ることができた. (成果発表としては裏面に記載のものはないが第14回輸送現象論国際会議及び大阪大学学位論文の形で発表している)
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