Research Abstract |
1.ガスフロー状態での窒素ガス中のベンゼン分解生成物の調査 窒素(92%)-ベンゼン(8%)混合ガスを,圧力8.7Paに保ちながらフローさせた状態で電極間に直流グロー放電を発生させ、質量分析と発光分光分析によりベンゼンの分解生成物の調査を行った。放電発生とともにベンゼンの質量スペクトルが減少し,H_2,C_2,C_2H, C_2H_2またはCNの質量スペクトルが増加することが確認された。また,増加割合は小さいが,C, CH, CH_4,NH_3のマスピークにも同様の変化が観測された。発光分光測定では,放電発生時にH, CH, NH_3,CNの発光の増加が観測された。これらのことから,窒素-ベンゼン混合ガス中では,H, H_2,C_2,C_2H, C_2H_2またはCN, C, CH, CH_4,NH_3が生成されていると考えられる。 2.ガス封じ切り状態での窒素およびアルゴンガス中グロー放電におけるベンゼン分解過程の調査 窒素(90%)-ベンゼン(10%)混合ガスを133Pa程度放電チェンバーに封入し,直流グロー放電を発生させ,質量スペクトルの時間変化を測定した。放電開始とともにベンゼンの質量スペクトルが減少し,同時にH, H_2,C_2H_2,C_2H, C_2の質量スペクトルが増加し,これらがベンゼンの一次分解生成物と判断できる。特に水素と,C_2H_2のスペクトルが強く,これらがベンゼンの主たる分解生成物であると考えられる。また,C_2H_2,C_2H, C_2の質量スペクトルは一旦日上昇するが,ベンゼン濃度が低下すると減少してゼロになることから,これらの生成物はさらに分解される,あるいは電極や容器に堆積するなどして,気相から消失している。 アルゴン(90%)-ベンゼン(10%)混合ガス中においても同様の実験を行った結果,窒素-ベンゼン混合ガスの場合とほぼ同様の結果を得た。したがって,低気圧直流グロー放電中のベンゼン分解において,イオンや励起分子の寄与は小さく,高エネルギー電子の衝突による分解が主であると考えられる。
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