Research Abstract |
本研究では,全国的にデータ整備が進むデジタル地理情報と地理情報システムを用いて,都市近郊農村地域を特徴づけている現在と過去の田園景観(景観域)の,面的分布,空間,住宅地開発における阻害状況など特性を明らかにし,農業生産機能,生態系の保全,住宅立地適性等の視点から地域評価を行う。この評価を基に,農業,環境保全及び居住地としての位置付けを明確化した計画区域を設定し,各区域の整備・開発・保全手法を検討したものである。 本研究で扱う景観とは,地域の自然,社会経済,空間の諸事象を総体化した,地理学的・生物学的景観(景域)である。 研究成果として,(1)地域の自然環境・開発の状況を汎用に捉えるため,国土数値情報(1/10細分区画土地利用データ,50mメッシュ標高)を地理情報システム上でオーバレイさせ,9種類の景観原単位を設定し,混住化以前の景観を復元を行った。 (2)復元化した景観については,国勢調査及び国土数値情報の人口動態・地域社会経済・空間整備の実態指標をデータとした分散分析により,6つ(平地水田,平地混在,平地畑地,台地畑地,波丘地,山間)の等質領域を抽出した。この領域は,これまでの地域計画単位である農業集落・市町村と一致ぜず,田園地域の特性に立脚し,領域毎の汎用な計画課題を導出することができる。これを景観域と呼称し,仮想の計画区域として捉える。 (3)各景観域の特性を把握するために地形・植生・法的規制,住宅地開発動向から,各景観域における混住化前後の景観変容特性を明らかにした。 (4)首都圏地方自治体の田園景観・環境保全の施策・計画の動向を踏まえ,6つの景観域毎に,混住化により生じる景観阻害問題,景観整備の方向・視点・条件,整備形態モデル及び整備の制度的対応と現状の課題,について整理・考察を行い,景観保全のあり方を提言した。
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