Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
実験動物を、生育可能な程度の低酸素に慢性暴露すると、重度の急性低酸素ストレスに対する心臓の抵抗性が高まる、といういくつかの報告がある。この現象に、生体の低酸素適応に重要な転写因子、Hypoxia-inducible factor 1 (HIF-1)が関与するのではと考え、以下のように実験を行った。 ラットを600hPa(海抜約4,200m相当)の低圧低酸素環境に、30日間暴露した。対照群は、常圧常酸素環境(990〜1,000hPa,海抜約120m)において飼育した。慢性低酸素暴露終了後、摘出灌流心標本を作成して、常酸素灌流で標本を安定させた後、60分間の重度低酸素(0%O_2)灌流,再度の60分間の常酸素灌流中の、左室収縮機能を観察した。また、HIF-1蛋白のサブユニットのうち、低酸素で誘導されるHIF-1αの、左室筋における発現を、低酸素暴露3日後,7日後,14日後,30日後の時点で、Western blot法により観察した。 予想に反し、慢性低酸素暴露群の心臓では、急性低酸素灌流中,および再酸素化時の左室拘縮(拡張不全)の程度は、対照群の心臓より強かった。左室筋におけるHIF-1αの蛋白発現は、暴露3日後,7日後,14日後,30日後のいずれの時点においても、対照群に比し有意に増加してはいなかった。 このように、過去のいくつかの報告とは異なり、本実験においては、慢性低酸素暴露により心臓の低酸素抵抗性はむしろ低下した。また、本実験における程度の低酸素暴露では、左室筋においてHIF-1が誘導されるという証拠は得られなかった。より強い低酸素暴露によって、左室筋でHIF-1が明白に誘導されるか否か、その際低酸素抵抗性は高まるか否か、検討する必要がある。また、本実験でみられた心臓の低酸素抵抗性低下の機序として、左室筋のHIF-1とは別の因子についても、検討する必要がある。
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