Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
対象と方法 手術で切除された胃原発腫瘍42病変の組織切片に対して免疫染色を行った。結果 印環細胞癌、低分化型腺癌にMsi-1の陽性像は確認されなかった。乳頭状腺癌、管状腺癌にはMsi-1の発現のある病変と無い病変がみられた。管状構造に異型の少ない病変でMsi-1の発現がみられる傾向にあり、胃腺腫でより明確となった。特に異型の低い腺腫では非腫瘍性の腸上皮化生粘膜と同様の染色パターンを示していた。また、興味深いことに各種腫瘍マーカーの表出に乏しい未分化癌でMsi-1の強い発現が確認された。我々が仮にMalignant small round cell tumorと呼んでいる、悪性リンパ腫類似の末分化型癌で、病理的に未確定の腫瘍群(Nagashima R et al.Medical Journal of Kagoshima University 1995;47:103-)に強陽性であった。今後の展望(1)Msi-1は異型度の低い腺癌に陽性で、予後良性の腫瘍の指標と成りうることが予想され、今後、臨床生存解析を行いたい。(2)胃腺腫の一部で非腫瘍性上皮様の発現パターンがみられ、このことは胃腺腫の腫瘍性に疑問を生じさせる。我々は現在、胃腺腫に対するHelicobacter pylori除菌の及ぽす影響について臨床治験中であり、対象病変に対してもMsi-1の染色を行い、除菌に対する反応性との比較検討を行う予定である。(3)胃未分化癌の特殊な一群のマーカーと成りうることが示唆され、さらにMsi-1関連の蛋白について検討を追加する予定である。通常の胃癌と異なり、化学療法が極めて有効であった症例を経験し、新たな病変のentityとして確立することに臨床的意義が期待される。