Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
平成13年度は,急性膵炎重症化に伴い,胃十二指腸血流の低下に伴い,相対的に肝動脈血流が増加する可能性について解析した.さらに,本年度は,平成10年度からの重症急性膵炎症例に対し,膵酵素阻害剤持続動注療法を実施した8例の腹腔動脈撮影を後ろ向きに検討した.この結果,4例に胃十二指腸動脈の枯れ枝状変化(withered GDA)が捉えられており,いずれも死亡例であった.つまり,膵血流・腸管血流の低下がtotal prognosisに及ぼす影響が高いことが容易に想定される.従って,平成14年度は以下の実験を実施した.Wistar系雄性ラットを用い,膵胆管十二指腸開口部を中心に4cmのclosed duodenal loopを作成し急性膵炎を作成した結果,発症4時間後にはinflammatory cytokinesである血清IL-6はsham群の119.459±22.663pg/mlに比し,327.674±124.720pg/mlと有意に上昇をみとめ,発症6時間後でもsham群の83.459±17.784pg/mlに対し,309.499±102.410pg/mlと有意な上昇を続けた.また,血清IL-1βは,発症4時間後では285.065±48.659pg/ml(sham群:238.089±17.372pg/ml)であったが,発症6時間後で422.556±122.601pg/mlとなりsham群の232.818±4.836pg/mlに比し有意な上昇をみとめた.つまり,実験的急性膵炎モデルでは,発症の比較的早期から,inflammatory cytokinesの上昇がみられることが想定された.他方,L-arginine monohy drochloride450mg/kg体重を7週齢のWistar系雄性ラットに単回腹腔内投与することにより作成した急性膵炎モデル(アルギニン膵炎)においてCanon LC-1 laser doppler flowmetryを用いて膵の組織血流の解析を行った結果,発症前:4.83±0.152BFI(blood flow index),12時間後:4.42±0.213BFI,24時間後:3.49±0.263BFI,72時間後:1.47±0.36BFIと漸次低下していった.さらに,急性膵炎の重症化に関わる血流変動におけるbradykininの関与を検討するため,2種類のラット急性膵炎モデルを用いて検討を加えた.すなわち,軽症急性膵炎モデルであるセルレイン膵炎と重症急性膵炎モデルであるアルギニン膵炎をラットに惹起させ,血漿bradykinin免疫活性値とlaser Doppler flowmeterを用いた膵・腎組織血流を比較検討した.加えて,各々のラット急性膵炎モデルにbradykinin B2 receptor antagonist (HOE140)を投与した場合の検討を実施した.血漿bradykinin値はコントロール;15.2±1.5pg/mlに対して,セルレイン投与後4時間で35.3±2.8pg/ml,アルギニン投与後6時間で49.6pg/mlとアルギニン膵炎モデルで著明な上昇を認めた.膵組織血流は,アルギニン膵炎モデルにおいてコントロール;6.81±0.23BFIに比し,4.97±0.28BFIと有意に低下していた.HOE140の前投与はアルギニン膵炎早期の膵・腎血流低下を阻止した.平成14年度の検討結果として,急性膵炎の予後に関わる因子としてwithered GDAが挙げられ,その成因にはIL-1βやbradykininが強く関与するものと想定した.
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