Research Abstract |
HMG-CoA還元酵素阻害(以下statin)は、コレステロール低下作用に基づく動脈硬化抑制効果に加え、近年の研究で抗炎症作用を持つことが知られている。一方、脳虚血時にはサイトカインの誘導によって血管内皮に白血球が粘着し、炎症性の障害を引き起こす。血管内皮由来のnitric oxide(NO)はsuperoxideを産生する血管内皮のxanthine oxydaseを抑制することで、白血球粘着を抑制し、梗塞巣を縮小させる効果があるとされているが、その詳細については不明な点も多い。本研究では、statinの脳循環に対するsubacute effectの抗炎症作用に注目し、脳虚血時の白血球血管内動態(rolling, adhesion, extravasation, plugging)に対し、statinがどのように作用するかをin vivoで観察することにより、statin投与による脳梗塞発症例における進展予防効果を解明し、脳梗塞の一次予防をも含めた治療の新たな展開の可能性を検討した。 研究実施計画として、open cranial window (dura intact)を作成した。Wister ratの虚血再灌流モデルを用いての脳表および深部脳血管をHMG-CoA還元酵素阻害薬(以下statin)投与群と非投与群で行うことを予定していたが、平成13年度は虚血モデル作成の安定化に時間を要した。平成14年度は、脳虚血モデルの脳血管の観察をconfocal laser scanning microscopy(以下CLSM)にて脳表および100μm下の深部静脈と直径5μm以下の毛細血管を観察するとしていたが、CLSMのscanning timeと動物の呼吸による体動のため、観察面のずれが生じ、同一の血球成分の観察が困難であった。そのため人工呼吸器の呼吸回数とscanning ratを同期させ、同一面を観察するよう設定変更を繰り返し行ったが、ばらつきが大きく、血球の血管内動態のうちrolling, pluggingを経時的に観察することは困難であり、adhesion, extravasationに関してもscanの観察面が変動するため、正確な評価は出来ていない。現在これらのデータの解釈と血球動態の定量化につき検討中である。
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