Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2001: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
|
Research Abstract |
マウス転移肝モデルにおける肝の虚血再灌流が腫瘍ならびに正常肝組織に及ぼす影響について,70%肝切除モデルを用いて,特に酸化的ストレスに着目し,細胞内グルタチオンペルオキシダーゼ欠損マウス(以下KO群)を用いて,正常マウス(以下WT群)と比較した.腫瘍移植モデルにはLewis lung cancer cell lineを用いた.基礎実験の段階で,未処置の肝と70%肝切除後に癌細胞をKO群とWT群に移植したが,増殖速度ならびに腫瘍重量に差異はなく,GPx1欠損による腫瘍転移巣の増殖への影響はなかった.一方,正常肝組織については,70%肝切除後にKO群が術後24,48時間ともに有意に残存肝の再生が亢進していることを肝再生率とBrdU labeling indexから発見した.さらに,GPx1欠損にもかかわらず,肝切除後のALT, ASTを指標とした肝細胞障害は,KO群でWT群と比較して有意にが軽減していた.血中の炎症性サイトカインであるTNFαとIL-6は,KO群でWT群と比較して有意にその分泌が抑制されており,GPx1の欠損が炎症性サイトカインの発現を抑制することに関与していることが判明した.以上から,GPxl KO mouseは,70%肝切除後に炎症性サイトカインの発現がGPx1の欠損によってmodulateされることによって肝細胞障害が軽減され,さらに術後早期には肝切除後の肝再生がWT mouseと比較すると明らかに亢進することが判明した. antioxidant enzymeは様々な酸化的ストレスにとって生体を守るために重要な物質であり,その欠損は酸化的ストレスによる臓器あるいは細胞障害を増悪させるとの報告しかなく,今回の検討結果とは全く異なるものである.しかし,70%肝切除での阻血時間は短く,虚血再灌流障害そのものは非常に軽度である.したがって,酸化的ストレスの程度によって,antioxidant enzymeの果たす生体への反応が異なる可能性があることが示唆された.
|