Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
悪性脳腫瘍、殊に悪性神経膠腫はじゅうらいのいかなる治療法によっても治療困難であり新たな治療法の開発を必要とする疾患の一つである。その中でも条件複製型単純ヘルペスウイルスG207を用いた腫瘍融解遺伝子治療はアメリカ、イギリスにおいて臨床使用が開始されており、Phase I trialの結果が報告されているが抗腫瘍効果は完全ではなく、今後抗腫瘍効果を高める治療法の開発が望まれている。我々は生体内免疫機構がG207の複製増殖、細胞感染において抑制作用を持つと考え、現在すでに臨床使用されているアルキル化剤(Cyclophosphamide : CPA)を用い、免疫抑制状態におけるG207の細胞傷害作用増強の検討を行った。我々はすでにH13年度の研究においてHSV-Ab(+)nude mouse血清がin vitroにおいて60分間で80%以上のG207不活化作用を持つことを確認しており、この結果を基にin vivoの検討も行った。1. Fischer ratは免疫不全モデルではないため、より強力な免疫作用を持つことが予想された。このモデルにおけるHSV-Ab(-)血清、HSV-Ab(+)血清を用いたin vitroの検討を行った。結果は以下のようであった。HSV-Ab(-)ratにCPA(腹腔内投与)を用いた場合、血清のG207に対する中和抗体価は4以下であるのに対し、HSV-Ab(-)ratにCPAを用いなかった場合、血清の中和抗体価は16であった。さらにHSV-Ab(+)ratの血清では、G207に対する中和抗体価は512であった。2. in vivoにおけるCyclophosphamide(CPA)使用下でのnude mouse皮下腫瘍に対するG207細胞融解作用の検討。結果として次の内容が得られた。腫瘍径が5mmの時点でCPAを腹腔内投与し皮下腫瘍内へG207を注射した場合、CPA非使用群に比し腫瘍増殖速度を約半分に抑えることが可能であり、生存期間の延長も認められたが、完全な腫瘍融解は認められなかった。3. 脳内へ定位的に移植した悪性神経膠腫細胞株U87へG207を定位的に注入した場合CPAを腹腔内投与を施行した群では優位に感染細胞数の増加を認めた。