Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
耳石形成不全マウスは、形質膜カルシウムポンプtype 2遺伝子に突然変異がみられる。同遺伝子はカルシウム代謝に関わり、細胞内に流入したカルシウムを細胞外にくみ出し、細胞内外のカルシウム勾配を形成する働きを司る。平成13年度の当該研究において、走査電子顕微鏡にて、球形嚢の耳石のみが選択的に障害されることを明らかにした。本年度は免疫組織学的検討として、抗形質膜カルシウムポンプ抗体を用いて、マウス前庭における同蛋白の分布を検討した。マウス側頭骨の連続凍結切片を作成し、内耳前庭における前述抗体の発現を蛍光抗体法によって明らかにした。球形嚢・卵形嚢の各平衡斑では有毛細胞に発現が認められた。暗細胞領域や、平衡斑周囲の内膜に弱い発現が認められた。既報告では、同蛋白は蝸牛有毛細胞にも発現がみられ、感覚受容器として活動電位を発するために必要不可欠と予想される。耳石は平衡斑で作られて、暗細胞領域で吸収されると考えられている。周辺組織で認められた弱い発現は、耳石の再吸収に関わっていることを示唆するものである。しかし、球形嚢・卵形嚢では発現具合に差がみられなかった。前述の組織学的検討では、耳石の形成不全は球形嚢にのみ認められたことと矛盾する。形質膜カルシウムポンプには2つのサブタイプが存在するが、今回使用した抗体は、両方のサブタイプを認識する抗体であった。同マウスの遺伝子変異はtype 2にみられた変異であり、球形嚢では選択的にtype 2が発現していると推測される。