Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
【対象と方法】未治療の頭頸部扁平上皮癌54例(舌口腔底23例、中咽頭14例、下咽頭17例)で、cyclinD1遺伝子(CCND1)と上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の近傍に存在する第7番染色体セントロメアの増幅を、FNA又はパンチ生検材料を用いてFISHで解析し、CDDPと5FUによるNACの効果との相関などを検討した。また、ヒトロ腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2)にEGF(上皮成長因子)を添加しcyclinD1の発現の状態を免疫組織化学染色により確認した。【結果】54例のうち、28例においてCCND1が増幅しており、更にその88%で第7番染色体セントロメアの増幅が確認された。In vitroではHSC-2にEGFを添加すると蛋白レベルでcyclinD1の発現が増幅することが確認された。これらの結果から、HSC-2においてを介する細胞内伝達系と細胞周期制御蛋白であるcyclinD1との関連が推測された。臨床においては化学療法を施行した27例で、CCND1の増幅が認められた症例では有意にNACの効果が不良であった(p=0.02)。さらにcluster状のCCND1過剰発現が認められる症例では、免疫染色でも特に強陽性を示すことが多く(p=0.0005)、頭頸部癌で悪性度の高い下咽頭癌で高頻度に認められた(p<0.0001)。下咽頭癌17症例において化学療法併用の放射線治療を施行した場合、の発現がcluster状に増幅する症例においては1年以内の局所再発率が有意に高かった。【考察】CCND1の増幅はEGFR遺伝子の増幅との関連が示唆され、頭頸部扁平上皮癌の生物学的悪性度を示す重要な因子と考えられる。また、臨床的にも微少検体によるFISHでの検討は侵襲が少なく、治療前に化学療法や放射線療法に対する効果および予後に対する指標としての有用性は高いと考えられる。