Research Abstract |
炎症性サイトカインの刺激により活性化された歯肉線維芽細胞が産生するPGE2は歯周炎の病態形成において中心的な役割を演じていると考えられている。そこで我々は、ヒト歯肉線維芽細胞におけるIL-1β依存的PGE2産生の細胞内シグナル伝達機構を明確にすることを目的とした研究を行い、以下に示す結果を得た。 (1)IL-1βはCOX-2、membrane PGEs(mPGEs)のmRNA発現およびPGE2産生を促進する。(2)IL-1βはMAPK(ERK1/2.p38.JNK1/2)およびIKKα/βと1-κBαのリン酸化、c-Fos/c-JunのmRNA発現、AP-1とNF-κBの活性化を促進する。(3)ERK1/2阻害薬(U0126,PD698059)、p38阻害薬(SB203580)、AP-1活性化の阻害薬(curcumin)、NF-κB活性化の阻害薬(NAC, PDTC, gliotoxin)の前処理はいずれもIL-1β依存的に発現誘導されるCOX-2,mPGEsのmRNA発現とPGE2産生を部分的に抑制した。 以上の結果は、ヒト歯肉線維芽細胞におけるIL-1β依存的PGE2産生にはMAPK-AP-1カスケードとIKK-IκBα-NF-κBカスケードが共に関与していることを示している。したがって、これらのシグナル伝達阻害薬は歯周炎の進行抑制のための治療薬になり得ると考えられ、本研究の結果は歯周炎に対する新規治療薬開発のための有用なデータを提供するものである。
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