Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2002: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
検体より分離されたMRSAが感染症の起因菌であるか常在菌(保菌)であるかを迅速に鑑別する方法(鑑別診断法)を開発することを目的として、黄色ブドウ球菌が産生する酵素の産生量が対数増殖期と静止期で異なるという性質を応用した研究をプロテインAとDNaseを対象に実施した. 昨年度までに,プロテインAおよびDNaseを定量するための二抗体サンドイッチ法を利用した酵素免疫測定系を構築し,臨床分離株5株と標準菌株Staphylococcus aureus NCTC8325株の培養上清中に分泌された酵素(プロテインAおよびDNase)を経時的に定量した.その結果,これらの分泌タンパク質は,対数増殖期と静止期で発現量が異なることを確認することかできた.このことは,MRSAにおいて,分泌タンパク質の発現が,agr系(a global regulatory system)の支配によって増殖のフェーズに応じて制御を受けているという性質を反映しているものと考えられた. 本年度は,昨年度に構築した酵素免疫測定系の感度を高めるために種々の調整条件の検討を行うとともに,化学発光を利用することにより,感度を10〜100倍上昇させることに成功した.次に,この高感度測定系を利用して,MRSA感染症患者,MRSA非検出患者,健常者に由来する血清および尿検体中に含まれるプロテインAおよびDNaseを定量した.その結果,MRSA非検出患者や健常者の血清中からはプロテインAおよびDNaseが検出されなかったのに対して,MRSA感染症患者の血清中にはプロテインAまたはDNaseの存在が確認された.一方,MRSA感染症患者とMRSA保菌患者に由来する喀痰に対して定量したところ,MRSA保菌患者の喀痰においてはプロテインAおよびDNaseのいずれも検出できなかったのに対し,MRSA感染症患者の喀痰中からはプロテインAまたはDNaseが検出された.これらのことから,本研究において構築したプロテインAおよびDNaseの測定系は,MRSAの活動性評価(感染症か保菌状態の鑑別)のために有用な検査診断法である可能性が示唆された.今後,さらに多くの臨床検体を用いて検討することにより,臨床応用にむけた展開を行う予定である.
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