Research Abstract |
多群の線形判別は,ランキングを生成する過程と見なすことが出来る.これは数学的には,数理心理学において選好データに対して用いられている理想点モデル(展開モデル)とも同値である. 本研究ではまず,昨年度末から本年度前半に,このモデルから生成される個々のランキングについて,その特徴付けを与えた.具体的には,あるランキングがこのモデルで生成されるか否かを,群の中心たちの差として得られるベクトルたちが集中しているか分散しているかという形で,特徴付けた.実際にはより詳しく,生成されたランキングが有界領域に対応するのか非有界領域に対応するのかについても,特徴付けを与えている.その他,中庸な群が存在する場合のランキングの性質についても,いくつかの結果を導いた.以上の部分は,竹村彰通教授(東京大学)との共同研究である. 次に,本年度12月末以降,超平面配置の分野の第一人者である数学者の寺尾宏明教授(東京都立大学)の協力により,本研究は飛躍的な進歩を見た.具体的には,一つのモデルから生成されるランキングたちの集合のパターンがどのくらい多様にあるか,という難しい問題があるが,これについて,いくつかの重要な成果が得られた.特に1次元の場合においては超平面配置の理論における冪指数(exponents)の概念を用いることにより,具体的にパターンの個数が求められた.また各パターンがどれだけの確率で生成されるか,という確率的な要素を含んだ問題についても,現在研究が進行中である.
|