Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
アルツハイマー病の発症メカニズムにおいて、約40アミノ酸残基よりなる不溶性ペプチドであるアミロイドβ-ペプチド、(Aβ)の脳内における蓄積あるいは濃度の上昇が中心的役割を担うと考えられている。脳内に産生される主要なAβはAβ(1-42)、Aβ(1-40)などだが、老人斑形成の初期から普遍的に蓄積する主要なAβは、Aβ(1-42)のアミノ末端から2つのアミノ酸残基が遊離してグルタミン酸(Aβ(3E-42))となり、さらにグルタミン酸の側鎖カルボキシル基と主鎖アミノ基が環化してピログルタミン酸となったAβ(3pE-42)である。従って、Aβ(3pE-42)の環化メカニズムを解明することは、アルツハイマー病の予防という観点から重要な意味を持つ。そこで、まず始めに、このAβ(3pE-42)の前駆体と考えられるAβ(3E-42)をペプチド合成機を使用してFmoc法により合成した。純度の高いペプチドを得るために、合成はレジンに対してFmoc-アミノ酸が10倍量のダブルカップリングで行なった。次に、この合成したAβ(3E-42)を用いて、金属イオン、温度、pH、ラジカル、、その他の添加物等がAβ(3pE-42)への環化に及ぼす影響を検討した。LC/MS、抗Aβ(3pE-42)抗体(当研究室で作製したペプチド抗体)を使用したウエスタンブロット、MALDI-TOF質量分析計などを利用して、Aβ(3pE-42)の検出を行なった。その結果、ある条件で環化が促進される傾向にあるらしいことが判明した。現在さらに詳細に検討中であり、平成14年度も引き続き継続して行なう予定である。