Research Abstract |
複合材料中の繊維,マトリックス,界面の強度は分布を持っているので,応力を負荷すると,繊維破断,マトリックス破断,界面剥離などの損傷はまず弱いところで生じる。生じた損傷は,損傷の種類と空間分布(損傷マップ)に依存してお互いに相互作用しながら,次に起こる損傷の種類と空間位置を決め,損傷マップが変化する。さらに,変化した損傷マップに対応した損傷間の相互作用で,次に生じる損傷の種類と位置が決まり,損傷マップがまた変化する。破壊はこの過程が繰り返されて進行する。 本研究では,このような破壊過程を記述するため,シェアラグアナリシス法とモンテカルロ法を組み合わせたシミュレーション手法の開拓を試みた。 主な成果は以下のように要約される。 (1)応力の釣合連立微分方程式を差分化し,それに組み込み可能な損傷の種類と位置を表すパラメータを導入することによって,方程式と損傷マップを一対一対応させて,次に現れる損傷の種類と位置を同定する方法を開発した。これにより,次の損傷の種類と空間位置の同定,新しい損傷マップの作製の作業が連続的に繰り返しできるようになった。 (2)損傷が,いつ,どの位置に生じるかは構成材や界面の強度の空間分布に依存する。この現象を記述するため,上記(1)で開発した計算方法と,構成材強度の空間分布を与えられるモンテカルロ法とを組み合わせた。これにより,近似的にではあるが,損傷が材料内各所で生じ,お互いに影響を及ぼし合いながら,負荷ひずみの増加と共にその数を増し,材料全体の破壊へとつながっていく過程と,その結果あらわれる材料全体としての応力-ひずみ曲線,強度,破壊モルフォロジーを記述することができた。
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