Research Abstract |
ヒト由来肝細胞を用いてオルガノイド培養法の開発について検討を行った。 1.ヒト肝芽種細胞であるHepG2に対し,血漿分離用中空糸内部に遠心力によって充填することによりオルガノイド形成を誘導する遠心力誘導オルガノイド形成法を適用した。その結果,HepG2は中空糸内部において円柱状のオルガノイドを形成しながら増殖し,初代肝細胞の約7倍に相当する7.0×10^8cells/cm^3の高密度培養を達成した。また,肝特異的機能の発現に関して,単層培養状態では消失していたアンモニア除去能の発現が認められた。その発現レベルは初代ヒト肝細胞の約1/5〜1/10程度であったが,細胞増殖により,中空糸単位体積あたりでの機能発現レベルは初代ヒト肝細胞と同等以上まで到達した。一方,過増殖によるオルガノイド内部での死細胞の増加とそれに伴う機能低下が生じ,長期的な培養を行うためには細胞増殖を制御する工夫が必要であることが示された。 2.HepG2の分化誘導,増殖制御の手段として,培養培地中への分化誘導剤の添加に関してPUF/スフェロイド培養を用いて検討を行った。その結果,分化誘導剤の一つである酪酸ナトリウムの添加によりHepG2の増殖は抑制され,約4倍の機能上昇が認められた。この効果は酪酸ナトリウム除去後24時間目までは持続することを確認した。以上の結果をモジュール培養に応用することで,モジュール内でのHepG2の細胞数制御,分化誘導手法を確立した。 以上,本研究では分化レベルの低い細胞に対し,高機能発現を可能とするオルガノイド培養法,分化誘導手法,またオルガノイド形成と機能発現の関連について検討を行い,肝幹様細胞培養技術確立のための重要な知見を得ることができた。
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