Research Abstract |
本研究の目的は,わが国における看護ケア技術のイノベーション普及過程,メカニズム,影響要因を明らかにし,看護学における新知見を普及する方略の開発とその確立を促進するための基礎的研究を行うことである。 昨年度,過去10年間に開発された看護ケア技術について基準に基づき30項目選択し,協力の得られた2施設の大・中規模病院で参加観察並びに看護師に聞き取り調査を行い,全国調査をするための看護ケア技術の適切性について検討し,調査項目を20項目まで精選した。今年度は,研究協力が得られた各都道府県の大学病院・総合病院70施設(1施設30名の調査紙配布)の内科系・外科系病棟のスタッフ看護師2100名(女子)を対象に,選択された看護ケア技術20項目のイノベーション普及段階の測定(知らない段階,知識段階,態度段階,決定段階,実行段階)と属性に関する質問紙調査を行った。なお,調査対象者への倫理的配慮として,質問紙は個々に返信用封筒を同封し,郵送回収した。 結果,1665名(79.3%)の回収数が得られた。対象の背景は,大学病院922名,総合病院743名で,平均年齢31.1±8.3歳,平均経験年数9.3±8.2歳であった。専門学歴は看護学校1204名,短期大学359名,大学80名,NA22名で,配属診療科は内科系602名,外科系1063名であった。イノベーション普及段階は,知らない段階2項目,知識段階2項目,態度段階2項目,決定段階10項目,実行段階4項目で,褥創ケア,ストーマケア,感染予防,体位変換,尿失禁ケア等に関する普及段階は決定から実行段階にあり、嚥下・口腔ケア,姿勢の保持等に関する技術の普及段階は知らないから態度段階と低かった。段階が高かった項目の普及年数は9年と長く,一方,段階の低かった項目の普及年数は6.8年であった。影響要因としては,学会参加,専門雑誌,専門看護師・認定看護師の存在,普及年数が考えられた。これより,開発された看護ケア技術はおよそ10年で臨床に浸透していくこと,看護ケアの質向上のためには,新情報を得るために学会参加や専門書講読の推進,専門看護師や認定看護師の活用の必要性が示唆された。また,学会や学術書の役割やこれらの広報活動についても再考することによって、普及年数の短縮が図られることが推察された。
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