ハイブリッド固体ゲート絶縁膜を用いた新奇なモットトランジスタの開発
Project/Area Number |
13F03502
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 公 国立研究開発法人産業技術総合研究所 (00356502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KUMAR NEERAJ
KUMAR Neeraj 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 外国人特別研究員
KUMAR Neerai 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Project Status |
Adopted (Fiscal Year 2015)
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Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2015: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2014: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2013: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 負の静電容量 / 電界効果トランジスタ / ゲート絶縁膜 / パリレン / 閾値特性 / 強相関電子系 / モット転移 / FET / SrTiO3 / High-k |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は非常に順調に進んでおり、平成26年度は当初に予定していた通り、チタン酸ストロンチウム(STO)単結晶上に、高誘電率酸化物であるHfO2とKumar氏が考案した2層パリレンとの積層ゲート絶縁膜を用いて、電界効果トランジスタ(FET)を作製することに成功しました。HfO2層とゲート電極層を作製するプロセスも、静電容量やリーク電流の変化を解析することで最適化させました。この素子についても透過型トンネル顕微鏡(TEM)で断面の詳細な分析を行い、パリレンがあるおかげでSTOの表面がきれいに保たれていることが確認されました。STOは最終的なモットFET製作の前段階の実験に最適な物質で、Kumar氏が提案する「電子相関の遮蔽長に与える影響」という物性物理の深遠な問題の探索に最適だと考えられる物質です。得られた試料を用いて、ゲート電圧の連続的可逆的制御でSTOにキャリアをドープすることにも成功し、FET動作することを確認しました。このFETはサブスレショルド・スィングが170mV/decade、易動度が10cm2/Vs、ゲート絶縁膜はSiO2に換算して(EOT) 0.21nmという驚くべき値を示しました。さらに界面のキャリアが負の静電容量を示すこともわかりました。現在論文を執筆しているところで近日中に投稿します。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HfO2とパリレンとの積層ゲート絶縁膜は非常に良い特性を示します。パリレンの膜厚を2層合わせて6nmにまで薄くすることに成功しましたが、これは予想しなかった成果です。さらにサブスレショルド・スィングが170mV/decade、易動度が10cm2/Vs、EOTが0.21nmという値は遷移金属酸化物のFETとしてはどれも驚くべき値です。さらに界面のキャリアが負の静電容量を示すということに至っては想像すらしていませんでした。クマール氏自身が秋の米国物質科学会(MRS)で発表する予定でしたが、ビザの発給が遅れてしまい残念ながらキャンセルせざるを得ませんでした。ホスト研究者の井上が国際会議の招待講演で紹介したところ大きな反響を呼び、Kumar氏には世界中の多くの著名な研究者からオファーが届いており、嬉しい悩みです。この現象を限られた時間でさらに詳しく調べるために、極低温での実験の予定はキャンセルしましたが、予想をはるかに超える素晴らしい成果を上げることができました。
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Strategy for Future Research Activity |
負の静電容量という非常に興味深い発見は、今後さらに時間をかけて検証していかなければならないテーマです。これはモット絶縁体ではないSrTiO3という通常の絶縁体で観測されましたがSrTiO3の表面では空間対称性の破れからスピン軌道相互作用が増大し(ラシュバ効果)それによってモット転移と同じような現象が引き起こされている可能性があります。その場合、キャリアドープによってバンドギャップが閉じる(つまり化学ポテンシャルが小さくなる)という現象が起こって、負の静電容量が実現するのかもしれません。モットFETを作製する前段階として利用したSrTiO3で、まさにモットFETのような(あるいはそれ以上の)振る舞いが観測されてしまったのです。強相関デバイスの開発にとうとうブレークスルーがもたらされるかもしれません。しかし残された時間が短いため、Neeraj氏のデバイス作製のノウハウをまず検証して彼がいなくなっても研究が継続できるようにすることこそが本研究の成果を最大限に高めるためには必要だと考えました。そこで後任のポスドクの候補者(JSPSのPostdoctral fellowshipに応募中)に来てもらって、試料作製を学んでもらいます。負の静電容量の検証のために新しいデザインのフォトリソグラフィーのマスクを作製し、短期間で集中してデバイス作製と物性測定を行います。
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Report
(2 results)
Research Products
(19 results)