Research Abstract |
リチウムは, 双極性障害の治療・再発予防に広く用いられている薬物であるが, 未だ薬効発現機序の詳細は不明で有り, 再発予防に至っては薬物治療学的観点からの検討は見られていない. そこで本研究は, 覚せい剤精神病モデルと考えられるメタンフェタミン(METH)投与マウスにおいてリチウムがMETHの急性投与時の行動異常には影響を示さず慢性投与時の行動以上に対してのみ抑制効果を示すこと, すなわち, リチウムが覚せい剤精神病の再燃を抑制する可能性に着目して, 双極性障害の再発モデルの作製と本モデルに対するリチウムの薬効発現機序を解明することを目的として立案・申請した. 研究目的の達成を目指して1年間種々検討を行ったが, 残念ながら, 本研究の鍵となる双極性障害の再発モデルの確立に至ることができなかった. 一方で, 学位申請を考慮して平行して実施していた"アルツハイマー病治療薬ガランタミン"に関する研究が順調に進み, 先に見いだしていたガランタミン急性投与(3mg/kg)がα7ニコチン受容体を介してマウスの脳海馬領域特異的にインスリン様成長因子2 (IGF2)の発現を増加させること(Kita et al., Psychopharmacology, 2013)に加えて, 平成25年度後半には, ガランタミン急性投与が海馬歯状回穎粒細胞層でムスカリンM1受容体を介して細胞増殖を促進すること, また, 同脳部位でα7ニコチン受容体を介したIGF2発現増加により新生細胞の生存を促進することを明らかとした(Kita et al., Int. J. Neuropsychopharmacol., in press). これらの知見は, ガランタミンの新たな薬効発現機序を示すとともに, 認知機能障害の新しい治療戦略の開発に寄与するものと考えられる.
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