Research Abstract |
本年度は初めに, 特異な充填構造を導く鍵となる構造であるジベンゾ[g, p]クリセン(DBC)の, 単ジュ内部アルキンへのスタンニルリチオ化反応に立脚した合成法について, その汎用性を明らかにするために基質適用範囲を検討した. その結果, 本方法は骨格上に電子供与基, 電子求引基の双方を含む多様な置換基を導入できる, 汎用性の高い, 優れた合成法であることを見いだした. 特に, 2,10-位にヨウ素原子を持つ誘導体は, 更なる官能基化が容易であることが期待され, DBCのねじれ骨格を特異な充填構造を導くことに用いる上でたいへん重要であると考えられる. また, 本年度はDBC誘導体と同様に機能を有するπ共役系部位同士をつなぐリンカーの役割をもつ新しい分子として, 炭素架橋オリゴ(フェニレンビニレン)の類縁体のうち, ヘテロール環を有するものの合成について検討した. これらの分子は図2に示したように, 還元的環化反応と酸存在下の縮合反応を用いて構築することに成功した. 本年度は, これらの分子にドナー部位とアクセプター部位を付与することより, 色素増感太陽電池への応用が可能な新しい色素として応用するための更なる合成研究, 物性研究を行い, 実際に合成に成功. 現在, 色素増感太陽電池としての性能評価を行っているが, これらの新しいリンカーとして応用可能な分子はDBC誘導体同様, を特異な充填構造を導くことに用いる上で有用であることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は, 特異な三次元的構造を実現するために不可欠となる, ねじれ構造を持つジベンゾ[g, p]クリセン誘導体の合成研究および物性研究に力を入れ, これらの分子を機能性部位をつなぐリンカーとして用いる上でたいへん有益な成果を上げた. これらの成果の一部は, Chemistry - An Asian Journal誌のFull Paperとして投稿中である. また, 機能性部位のリンカーという共通点を持つ, 炭素架橋オリゴ(フェニレンビニレン)の含ヘテロール類縁体の合成および物性研究にも取り組み, 新規骨格の構築に成功, また, 実際にこれらをリンカーとして用いた, 色素増感太陽電池への応用を見込んだ新しい分子の合成に成功した. このことは, 期待以上の成果と評するべき結果であると考えられ, 特異な三次元的構造の実現にとっても有益な成果であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 本年度に合成した種々の縮合多環芳香族化合物をリンカーとして用いた種々の新規パイ共役系分子を次々と合成し, 単結晶X線構造解析を用いた充填構造の検討, また, 分子構造と充填構造間に横たわる関係性を明らかとし, 特異な充填構造に基づいた効率の良い電荷輸送材料への応用といった, 用途検討を行う.
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