Project/Area Number |
13J30007
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biophysics
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
片山 耕大 名古屋工業大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013 – 2014
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2014)
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Budget Amount *help |
¥2,760,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2014: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2013: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 視物質 / 波長制御 / 赤外分光 / X線結晶構造解析 / 膜タンパク質 / モノクローナル抗体 / 昆虫細胞 / 色覚 / 生物物理 / 霊長類 / 11-シスレチナール / 変異タンパク質 / 内部結合水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では色覚視物質に対する赤外分光法を用いた世界で唯一の構造解析を受けて、X線結晶構造解析により原子座標を決めることで色を識別するメカニズムをより詳細に理解することが目的である。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。 霊長類(ヒト)の色覚を担う視物質は、試料調製が困難なことからX線結晶構造解析を含めた構造生物学的研究はこれまで皆無であった。そのような現状下、私は培養細胞により発現させた霊長類色覚視物質に対する赤外分光法を用いた構造解析を6年前に開始した。発現量の低さ、光退色や熱安定性、タンパク質の凝集など、数々の問題を克服することで、昨年末の青視物質のスペクトル測定の成功をもって、ついに赤・緑・青3色全ての色覚視物質のスペクトル解析を完了させることができた。そしていよいよ色覚視物質の原子座標を決めるという夢を実現するべく、今年の1月から米国のCase Western Reserve大学薬学部専攻長Palczewski博士の研究室に参入した。当研究室は分子基盤に基づいた視覚研究分野において世界をリードするラボであり、視覚研究に最適な研究環境が整っている。今回私は、これまでの経験からタンパク質の取り扱いが最も容易な霊長類(ヒト)緑感受性視物質の結晶化に向けた大量発現に取り掛かった。発現には昆虫細胞を用いた新たな発現システムを使用するなど、発現系の確立には困難をきわめたが、すでに培養溶液1Lあたりミリグラムオーダーのタンパク質の発現にも成功しており、結晶化という夢実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができた。一方で、哺乳類細胞を用いた発現系と比較して、目的タンパク質の単離の際に不純物の混入による影響から純度が低い問題も生じてきており、タンパク質精製の最適化も今後行っていく予定である。 色覚視物質も含めた膜タンパク質の結晶化は、親水性が小さいことや、不安定でゆらぎに富んだ構造を有することから結晶化には不向きとされている。そこで私は、親水性表面を拡張させる目的でモノクローナル抗体フラグメントとの複合体の結晶化にも取り組む。これには未変性のタンパク質の親水性表面の立体構造を特異的に認識して結合する抗体を産生する必要があるが、幸いタンパク質のゆらぎを最小限に抑えられる可能性がある抗体を産生することにも成功している。今後、色覚視物質との複合体検証実験を行うとともに、複合体の結晶化にも挑戦する予定である。最終的には、赤外分光解析から得た構造情報とX線結晶構造解析から得られる原子座標を組み合わせることで、色覚視物質の構造解析を完了させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
6年間の日本での赤外分光による構造解析を受けて、色覚視物質の原子座標を決めるという夢実現に向けて、今年の1月から米国に渡った。一般的に結晶構造解析には赤外分光解析の1桁以上の試料が必要となる。今回私は、大量の色覚視物質を獲得するため、昆虫細胞を用いた発現系の確立に取り組んだ。哺乳類細胞と違い、細胞の品質管理の難しさなど実験は困難をきわめたが、最終的に培養溶液1Lあたりミリグラムオーダーの色覚視物質の発現に成功し、Palczewski教授からも厚い信頼を得ることができた。目的タンパク質の大量発現は結晶構造解析における最初のステップであり、結晶化に向けての大きな第一歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
昆虫細胞による発現系でミリグラムオーダーの色覚視物質を得ることができたことは、結晶化に向けての大きな第一歩である。今後は界面活性剤による色覚視物質の可溶化および精製条件の最適化を行う。可溶化でのタンパク質の抽出量は、その後の精製タンパク質の収量を左右するが、膜タンパク質の大半はこの可溶化ステップにおいて著しく構造安定性が低下し、変性や凝集の傾向が強まる。従って色覚視物質に適切な界面活性剤の選定を慎重に行う。また、親水性表面の拡張を目的に、色覚視物質とモノクローナル抗体フラグメントとの複合体の結晶化にも取り組む。すでにタンパク質のゆらぎを最小限に抑えられる可能性がある抗体を産生することにも成功している。今後、色覚視物質との複合体検証実験を行い、結晶化に挑む予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)