Research Abstract |
インターフェロン(IFN)-α/βによるToll-like receptors (TLRs)シグナルの増幅を介した,樹状細胞活性化に関わる新たな機構を明らかにした、TLRsは,病原体由来のPAMPs (pathogen-associated molecular patterns)を認識する生体側の受容体として知られているが,TLRを介するシグナルは,樹状細胞の二次リンパ組織のT細胞領域への移入並びに,成熟を促すことが知られている.中でもTLR3は,ウイルス関連分子の二本鎖RNAを認識することにより,効率的な抗ウイルス応答を誘導する重要な役割を担っていると考えられている.我々は,このTLR3が,自然免疫系において中心的な役割を持つIFN-α/βにより,mRNAレベルで誘導されることで,TLR3を介するシグナル伝達系が増幅されることを見出した.実際に,樹状細胞において,二本鎖RNAによる二相性の活性化メカニズムが存在することが示された.すなわち,初期では,二本鎖RNAによってIFN遺伝子が誘導される.後期では,初期で誘導されたIFN-α/βを介したシグナルによって,TLR3の発現が引き起こされることにより,TLR3シグナルの増幅へとつながることが明らかになった.IFN-α/βシグナルの入らないIFN受容体欠損(IFNAR1^<-/->)マウスでは,二本鎖RNAに対する樹状細胞の成熟障害が認められるが,興味深いことに,このIFNAR1^<-/->マウス由来の樹状細胞にTLR3のみを発現させることにより,その成熟障害が回復した.さらに我々は,IFNAR1^<-/->マウスにおいては,樹状細胞における二本鎖RNAあるいはRNAウイルスに対する成熟応答が認められないものの,T細胞領域への移入は正常に起こることも見出した.つまり,樹状細胞の二次リンパ組織への移動と成熟は異なるメカニズムによって制御されていることも明らかにした. 以上の結果より,本研究では,IFN-α/βによるTLR3シグナルの増幅系により,樹状細胞での二本鎖RNAによる二相性の活性化メカニズムが存在することを明らかにした.このようにIFN-α/βを介するTLR3シグナルの増幅は,ウイルスに対する免疫応答をより高めるために生体が獲得した制御機構であると考えられ,さらにこのことは,自然免疫系と適応免疫系との新たな連携機構の存在を示唆している.
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