Research Abstract |
固体触媒である二酸化チタンを用いた不均一反応系では,二酸化チタン表面 基質間の相互作用が,反応速度を決定する重要な因子になる.本研究課題では,ファージの不活性化を対象として,二酸化チタン表面への基質の吸着量を測定し,見かけの不活性化速度定数との関係を定量的に検討した.モデルタンパク質である牛血清アルブミン(BSA)を用いて二酸化チタン表面への吸着特性を調べたところ,BSAの吸着量は溶液のpHに依存し,二酸化チタンの等電点とほぼ一致するpH6付近で最も吸着量が大きくなることが分った.殺菌速度と基質の吸着量との関係を明らかにするため,溶液のpHと夾雑するイオン種を変化させて,ファージの不活性化に関する検討を実施した.光照射時間の増加に伴い,ファージ感染力価の対数値の直線的な減少が認められ,見かけの不活性化速度定数k'の値はpH6で最も高くなり,pH3および10では著しく低下した.また,種々のイオン種の存在下で同様の検討を行った結果,NO_3^-,SO_4^<2->,P0_4^<3->,K^+,Ca^<2+>を含む反応系では,それらの濃度の増加に伴い不活性化速度の低下が確認されたが,Cl^-,Br^-,Na^+を含む系では,試験した範囲内では顕著な不活性化速度の低下は確認されなかった.これらの結果は,二酸化チタン表面へのファージの吸着量に起因しているものと考えられた.そこで,不活性化試験と同じ条件で吸着実験を実施した結果,試験した条件下では,見かけの不活性化速度定数はファージの吸着量q_Tに比例することが示された.二酸化チタン表面へのファージの吸着は,両粒子の表面特性に依存すると考え,二酸化チタンおよびファージ・コートタンパク質の表面電荷のpH依存性に着目し,二酸化チタン表面へのファージの吸着モデルを提案し,実験結果を説明した.
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