ソーシャルワーカーによる日本型ASD(急性ストレス障害)介入モデルの開発
Project/Area Number |
14651043
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
社会学(含社会福祉関係)
|
Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
HENNESSY 澄子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (50326972)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 和穂 東京福祉大学, 社会福祉学部, 助手
|
Project Period (FY) |
2002 – 2003
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2003)
|
Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
|
Keywords | 急性期ストレス障害 / 記憶再構築ASD介入モデル / 出来事インパクト尺度 / ASD症状:侵入・回避・過覚醒 / 医療ソーシャルワーカー / トラウマ(心的外傷) / ASD(急性ストレス障害) / PTSD(心的外傷後ストレス障害) / CRT(危機介入チーム) / CISD(急性期組織的グループ介入方式) / トラウマ・インターヴェンション・プログラム / CMD(危機管理グループ方式) |
Research Abstract |
平成14年度に収集したアメリカとイスラエルにおける、急性期のストレス障害の介入実践より、イスラエルの「記憶再構築モデル」を取り上げ、平成15年5月に手引きを作成、6月に二回にわたり23名の群馬県内の医療ソーシャルワーカーを訓練した。東京都精神医学総合研究所の飛鳥井望博士訳の「出来事チェックリスト」で過去のストレス障害の有無を調査し、「出来事インパクト尺度(IES-R) 」をプリテスト・ポストテストとして、ストレス障害の三症状である「侵入」・「回避」・「過覚醒」の度合が、介入モデルの使用によって変化を見せるか調べた。モデルは、交通事故、対人犯罪等で病院に治療を受けに来た患者に、医療ソーシャルワーカーが入院中または外来で、二度にわたり面接し、トラウマを受けた事件の経緯を聞き、患者の記憶を順序だてて再構築し、物語のように語れるように指導する。大切なことは、患者がその物語を家族や友人に語ることで、これが面接後の「宿題」であった。理論は、ばらばらに記銘されたトラウマ体験の記憶を、前頭葉が「過去の出来事」と認識できるよう再構築することにより、扇桃体の興奮を鎮め、緊張ホルモンの分泌を抑え、ストレス障害の症状を改善するということであった。症状の度合いはインテーク面接時と、第二次面接後一週間後に調べた。データは平成15年7月より16年1月までに集計された。問題は、(1)救急患者を診る医療チームとソーシャルワーカーの連絡がよく取れず、6ヶ月の間に紹介されたケースが12件で、そのうち急性ストレス障害に該当するのが10ケースのみであったこと。(2)自分のトラウマ体験を他人に語ることに患者達が躊躇したこと。(3)事故と対人犯罪では、トラウマ体験の度合いが異なり、犯人追及のために被害者が警察から何度も面接され、二重三重のトラウマ体験をしたことで、統計的な比較が不可能であったことなどである。 研究に該当しない2事例を除き、考察により次のような結論がでた。(1)10ケースのうち出来事インパクト尺度でインテーク時に24点以上(イスラエルにおける報告で、「確実にストレス障害をもつ」とされた点数)あったのは8ケースで、そのうち5ケースは介入後24点以下に下がったこと。(2)合計点が24点以下に下がらなかった3ケースでも、「侵入」の度合いは軽減し、そのうち2ケースは「回避」の度合いも軽減している。これは記憶がまとまって、起こったことを現実として受け止め始めたことをあらわしていると思われる。理論では人が危機から立ち直る段階で、まず「回避」の状態から現実の受け入れがおこり、次に色々な感情表現があるという。「過覚醒」の症状は、この感情表現の一環であるので、急性期介入で、危機の最初の二段階の症状を軽減できたようである。ただ体験を言語化するのは、感情を他人に語ることをしない日本人には向かないようなので、物語や詩として書いたり、絵として描く抽象的表現も効果があると思われる。ストレス障害からの回復に肯定的な要因として挙がったのは、(1)過去に大きなトラウマを体験していないことと、(2)患者を支える家族と友人がいることであった。今後の課題は、(1)モデルは理論的に堅実であるので、「宿題」の形を多様化し、手引きを書き直すこと。(2)家族・友人・医療チーム・警察などにストレス障害についての教育を広めること。(3)群馬県以外の他県の医療ソーシャルワーカーを訓練し、モデルを更に試験的に使用してもらうことなどである。後者においてはすでに東京都医療ソーシャルワーカー協会の協力を得ることが出来ている。
|
Report
(2 results)
Research Products
(1 results)