Budget Amount *help |
¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
Fiscal Year 2004: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2003: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は,地域社会の言語状況を社会の特性という点から総合的にとらえる調査の枠組みを考案することにある。多様な社会の特性のうち,本研究では現代社会の特徴であるmobility(移動性)を取り上げた。地域社会内には複数の話者集団と言語変種が存在し,その勢力のせめぎ合いが地域の言語状況を決める。本研究では,これらの勢力のせめぎ合いをとらえるために,話者と変種のパワーバランスのモデル化を試み,その妥当性を検証した。具体的な検証は,鹿児島市内の8つの中学校で実施した語彙,文法,場面による変種の使い分けをたずねるアンケート調査の結果を分析することで行った。調査は中学2年生とその保護者(生徒1人につき1名)に対して行い,最終的に1171名から回答を得た。話者の勢力を表す指標としては,居住経験地域数と居住経験地域(地方)の2つを立てた。また,言語変種勢力の指標は,各変種の項目(と思われるもの)の使用率で表した。 この調査により,次のような結果を得た。(1)共通語項目は,鹿児島市のみ居住,鹿児島県内に居住経験のある者の使用が多い,(2)東京の口語は保護者より中学生の間で勢力が強い,(3)関西方言色の強い項目(伝聞の「ト」抜けなど)は,ほとんど使用されない,(4)関西・九州の両変種にまたがる項目は(断定辞「ヤ」,否定辞・終助詞「ン」など),その地域の居住経験者を中心に,決して多くはないが使用される傾向にある,(5)鹿児島の新しい方言項目(念押しの「ヨー」など)は中学生に,古い方言形(確認要求の「ガネ」など)は保護者で優勢である また次のような問題点があることがわかった。(1)それぞれの項目が複数の変種カテゴリーにまたがることが多く,その際,項目の分類を特定しにくい,(2)勢力を表す指標と項目の相関を見るという方法では,これまでの地域語研究の方法論との違いが不明確である。
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