Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本研究の目的は、「熱分解型の前処理装置」を備えた軽元素用同位体質量分析計において、有機化合物の熱分解により発生するCO分子が、試料中に含まれる水酸基などの含酸素官能基中のOと、それに隣接するCに由来する、という原理に着目した、新しい分子内同位体比分布の測定法の開発にある。今年度は、分子内に複数のOH基やメトキシル基を持つセルロースおよびリグニンに着目し、その炭素同位体比を実際に同装置で測定して、その同位体比を従来の「燃焼型の前処理装置」を備えた質量分析計で測定した炭素同位体比と比べることで、分子内炭素同位体比の測定可能性の検討を続けた。また、その成果を実際の試料に応用するため、北海道内の異なる環境条件からなる日本海側と太平洋側の各所、および中国の乾燥地域など、様々なフィールドで採取された樹木年輪試料から、セルロースやリグニンを抽出し、その炭素同位体比を、酸素・水素同位体比と共に熱分解型および燃焼型の両前処理装置を装備した質量分析計にて測定した。その結果を、気温、降水量などの気候要素の時系列データと相関解析することにより、セルロース等の持つ炭素同位体比が、酸素・水素同位体比と共に、樹木の生息環境の中の様々な気候因子の経年的変動に対応して、規則的に変化していることが明らかとなった。熱分解-同位体質量分析計を用いて、有機分子の炭素・酸素・水素同位体比を計測することにより、このように、さまざまな環境情報が得られることが示された。
All 2004 Other
All Journal Article (1 results) Publications (2 results)
Geochemical Journal 38
Pages: 77-88
10012848039