Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
平面大型配位子錯体であるフタロシアニン金属錯体(MPc)は、対アニオンを用いた部分酸化塩を作成すると高い電気伝導性を示し、かつ力学的に「柔軟な単結晶」が得られる場合があることが知られている。本研究では、中心金属としてパラジウムを用いたフタロシアニン(PdPc)とアニオンAsF_6^-、ClO_4^-を組み合わせ、電気化学的酸化法により新規部分酸化塩の作成を試みた。PdPcとClO_4^-との組み合わせからは針状結晶、AsF_6^-では針状結晶と板状結晶が得られた。AsF_6塩の板状晶は、粉末X線回折により判明した格子定数が既知の(H_2Pc)_3(AsF_6)_2C_<10>H_7Clの格子定数と類似しており、同型構造であると推定される。また元素分析結果もこのことを支持する。一方、これらの針状結晶はこの種の塩によく見られるTetragonalタイプの単結晶であるが、奇妙なことに「捻れた単結晶」が生成しやすい。このことは、他の中心金属のフタロシアニンではあまりみられない現象で、中心金属のパラジウムの特殊性に起因する他、H_2PcのPF_6塩が柔軟性を示すことと関係があるかもしれない。なお、今回のパラジウムを用いた実験は、Pdフタロシアニンにおいて部分酸化(電子引抜)が起こきる場所を特定することもその目的の一つであり、赤外吸収スペクトルによれば、今回合成されたPdPcの各塩では、部分酸化は有機配子部分に起きており、中心金属(Pd)の荷電状態には変化が生じていないことが判明した。PdPcのAsF_6塩の針状結晶の場合、室温での電気伝導度は8S・cm^<-1>であった。