Research Abstract |
本研究の目的は,圧電結晶上を伝搬する弾性表面波(SAW)を利用したセンサとアクチュエータ,ならびに弾性波励振源である櫛型電極を利用した電気化学センサを,一つの圧電結晶上で実現した新しいLab on a Chipの基礎研究を行うことにある.このうち,櫛形電極を利用した電気化学センサについては,この上に異なる試料を載せるとそのインピーダンス特性が変化することが明らかになった.電気化学センサは,弾性波励振源と共用するため,(1)液体を安定して流すための流路の作製,(2)SAWセンサを実現するための解析,(3)試料の排出法の3点に特に力をいれて研究を行った.(1)の結果,圧電結晶上に弾性表面波導波路を形成することで,エネルギの収束効果が得られ,流路となることが分かった.しかし,この導波路は2次元構造であり,液体の流れは3次元である.流路にそって液体が流れるようにするため,高分子などで,流路を圧電結晶上に形成する必要があることが明らかになった.ところで,液体のアクチュエータに用いるSAWと液体計測に用いるSAWはモードが異なる.一般に,アクチュエータ用SAW基板に計測用SAWを励起するには,弾性波導波路を圧電結晶上に設けなければならない.そのためには,解析により導波路の材質,厚さなどを決める必要がある.そこで,解析用のプログラムを作成した.このプログラムを既報の層状構造に適用したところ,有効であることが確認できた.現在,アクチュエータ用圧電結晶上についての解析を行っている.(3)では,測定した液体の排出方法について検討した.アクチュエータ用SAWの励振電圧を高くすると,液体は霧化することが分かった.また,霧化した液体は,静電場によって制御可能であることも明らかになった.これにより,例えば,微少量の廃液を霧化させ,紙等に吸着させることにより,可燃ごみとして焼却できる. 本研究により,圧電結晶上にセンサとアクチュエータを一体化した新しい機能素子が実現可能であることを示すことができた.
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