Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2003: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2002: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
|
Research Abstract |
環境中に存在する微量元素、とくに鉛あるいは水銀などの重金属が野生動物体内にどの程度、また、どの部位に蓄積しているかを知ることは重要である。前年度に引き続き、タンチョウの各種臓器材料を採取し、原子吸光法あるいはICP-MSにより16元素の濃度を測定し、以下の結果を得た。 1.タンチョウの微量元素濃度 (1)104個体のタンチョウから肝臓、腎臓、胸筋および羽を採材し、各組織におけるV, Cr, Mn, Co, Cu, Zn, As, Se, Li, Rb, Sr, Cs, U, Cd, PbおよびHgの16種の微量元素濃度を初めて明らかにした。 (2)臓器別では肝臓と腎臓の濃度が一般に高かったが、風切羽の濃度は胸筋より高い値を示す元素が多く認められ、風切羽も検査材料として十分に利用可能であることが示された。 (3)実質臓器での濃度から鉛中毒と思われる個体が2例みられ、また海鳥で一般に高いことが知られている水銀濃度は、陸産の鳥類としては非常に高い個体が多く認められた。 (4)汚染重金属を含む微量元素の濃度は肝臓と腎臓の間では高い相関がみられたが、これら実質臓器と風切羽との間では相関ははとんどみられなかった。 2.元素濃度に与える因子 (1)実質臓器ではV, Se, Cd, PbおよびHg濃度は、幼鳥よりも成鳥で高く、一方、Co, SrおよびAsでは幼鳥の方が高濃度を示した。しかしながら、風切羽においてはそのような傾向はみられなかった。 (2)一部の元素濃度には雌雄差、地域差が認められ、ことに汚染重金属であるAs, Cd, PbおよびHgでは大きな地域差が注目された。年次変化は認められなかった。 (3)地域差に影響すると思われる食餌からの汚染の蓄積を検討するために、様々なタンチョウの餌を入手し、元素濃度を測定し、これまで興味深いデータを得ている。 以上から、今回の研究でタンチョウの各部位における元素濃度を初めて明らかにし、さらに鉛中毒の発生および水銀汚染の存在を示した。また、風切羽は直接実質臓器の汚染状況を反映しないものの、十分に高濃度であり、羽の抜け替わり時の血液濃度を反映しているものと考えることができた。今回の調査・研究で、汚染濃度に大きな地域差が示されたことから、その原因を死因、食餌、環境などとの関連で、今後考察する必要性が示された。
|