Budget Amount *help |
¥3,300,000 (Direct Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2004: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2003: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
β-シリル-α,β-エポキシカルバニオンがβ-シリルアリルアニオン等価体として機能し,さらに光学活性エポキシドを用いることによりエポキシドのキラリティがカルバニオンに一部ではあるが転写可能であるという昨年度までの結果に基づき,本年度は不斉転写の効率の向上を目指して検討を行った.その結果,以下のような事実を明らかにすることができた. 1.エポキシドの開環,Brook転位までは立体化学を保持されるが,求電子剤との反応の段階でラセミ化が起こっている. 2.ラセミ化はカルバメートなどの配位能の大きな置換基を近傍に配置することにより,抑制することが可能で,それによって37%eeまで不斉収率を向上させることができた. 3.ラセミ化を抑える方法として,求電子剤との反応を分子内反応へ転換することに着目し,われわれが以前開発したBrook転位を利用する[3+4]アニュレーション法に適用した.その結果,鎖状エノレートの場合19%eeであったが,シクロアルケノンのエノレートを用いると,52%eeまで不斉収率を向上させることができた. 4.分子内反応として[2,3]シグマトロピー転位の一種であるWittig転位に着目し,γ-シリル-β,γ-エポキシ-α-アリールアルコールのアリルエーテルをn-BuLiで室温以上の温度下処理したところ一連のエポキシシランの転位反応で生成したアリルアニオンがラセミ化することなくアリルエーテル部と反応し,90%ee以上の高い不斉収率で対応する三級アルコール誘導体が得られた. 以上の結果は,従来-78℃程度の低温でも容易にラセミ化すると言われていたアリルカルバニオンが,室温以上の高温でほとんどラセミ化しないことを示しており,これまでの常識を完全に覆すものである.今後の展開に非常に期待が持たれるところである.
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