Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的は、「処理の流暢性の誤帰属」というプロセスが、様々な認知的/社会的判断に関与しているという仮説を検証することであり、またそれを通して、潜在記憶が社会的認知に果たす役割を探求することである。これに関連して本年度行った実験は、昨年度から継続して行ってきたものである。これは、異なる背景のもとで発展してきた3つの現象(有名性効果、単純接触効果、対人認知の文脈効果)を、同一刺激や同一手続きを用いた実験で検証するというものであり、これにより、表面的には異なって見える現象が、「処理の流暢性の誤帰属」という共通のプロセスのもとに成り立っていることを確認する。実験では、人物の顔写真を刺激として用い、実験参加者が、その写真に予め接触する回数を変化させることで、刺激に対する処理の流暢性を操作した。そしてその後、実験参加者には、その人物の有名性、好意度、知性のいずれかの評定を行わせ、刺激の事前接触がこれらの評定値にどう影響するかを調べた。もし、「処理の流暢性」が誤帰属過程を通して、こうした判断に関与しているのなら、写真刺激への接触回数が多いほど(すなわち、処理の流暢性が高いほど)、評定値が高くなると予測できる。結果は仮説を支持するものであり、すべての評定において同じ結果が得られた。ただし、効果量は有名性の評定でもっとも高く、次いで好意度、知性という順であった。また、評定に要した時間(反応時間)と評定値との関係は評定の種類によって異なっており、本実験の結果が、「処理の流暢性の誤帰属」というプロセスだけでは完全に説明できないことも示唆された。ここまでの結果は、2005年1月にアメリカで行われたSociety for Personality and Social Psychologyの第6回大会で発表を行った。さらにその後、追加実験を実施または計画しており、現在、研究論文の投稿に向け、準備中である。