Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
戦後日本の環境運動はどのように形成され、変化してきたのか。また、今日の環境NGO・NPOやボランティア活動は、1960年代以降の安保闘争、学生運動、平和運動などの「大文字の社会運動」とどのような関係にあるのか。本研究では、特定のイデオロギーを掲げ、社会変革を訴える「大文字の社会運動」がそれぞれ個別の開発反対運動、公害環境運動、地域運動へと分立・交差するところに位置し、今日の環境NGO・NPOの先駆けでもある「水俣病センター相思社」(以下、「相思社」)に注目し、それが70年代初期から現在にいたるまでの30年間の活動経験を「支援運動」という観点から分析する。それにより、社会が環境NGO・NPOやボランティア活動を支える理念の発見と、そこにおける被支援者と支援者との望ましい関係形成のあり方を構想するのが、本研究の目的である。近年、福祉、環境、地域再生、国際貢献などさまざまな領域において、ボランティアやNGO・NPOの役割が注目されている。こうした議論は、地球環境問題や阪神大震災やNPO法案といったテーマが浮上した80年代後半以降の文脈で、ボランティアやNGO・NPOの役割や必要性を訴えるものが多い。しかし、「相思社」の活動が今日のボランティアやNGO・NPOの先駆けであり、これまでも水俣病患者の福祉や環境問題の解決や地域再生などにおいて極めて重要な役割を果たしてきたことは等閑視されている。そこで申請者は、水俣病問題に対する全国の支援者の「共鳴の磁場」として70年代初めに設立された「相思社」の現在にいたるまでの活動経験を、「相思社」設立の呼びかけ人や職員、水俣病患者に対するヒアリング調査と「相思社」の様々な活動に関する資料・文献調査を通じて明らかにしてきた。