Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
医療サービス市場の実証分析では、医療機関の属性、患者の属性などに関する詳細な個票データが利用可能になってきている。ところがその一方で、医療機関の立地や患者の所得など、医療施設や患者の意思決定を扱う上で決定的に重要な経済変数を個票で入手できないために、集計データで代用せざるを得ないことが実証研究上の大きな限界・問題になってきている。この研究では「個票データの不足」があるときに、理論的に厳密な形で、その不足を集計量を用いて補完する手法を開発し、医療市場の分析に応用することを目的としている。集計量を用いて個票データの不足を補う過程では、個票が利用できる場合と同様に個人の意思決定をモデル化し。次に、集計量で補完したい個票データの分布が観察される分布に等しい、および、モデルから導かれる市場均衡が観察された市場均衡に等しい、という制約の下でモデルのパラメータを推定するという手法を用いている。今年度は、昨年に引き続き、医師による需要誘発の可能性が医療機関の長期的な参入行動に与える影響の実証分析、に対し上記手法を応用した。政府による市場介入政策の必要性を判断する上で、集計量を用いて推定せざるを得ないパラメータの値が必要不可欠だからである。実証研究の結果は、医療市場での参入規制に対し否定的なものであった。より具体的には1)医療機関の参入行動が医師による需要誘発を前提にしたものとは言えず、むしろ2)現状の診療報酬制度を前提に医療機関が合理的に立地選択した結果、医療機関の地域的偏在が引き起こされた可能性が高い、というものであった。
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