Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年度は、アップ・ダウン・ストレンジクォークの質量を考慮したシミュレーションによるハドロンとクォークの質量の計算を引き続き行った。特に、昨年度末に着手した格子間隔を変えたシミュレーションを重点的に行った。その結果、クォークのダイナミクスを無視したクェンチ近似のもとではQCDから非摂動的に計算したハドロンの質量が実験値から有意にずれるのに対し、軽いクォーク、即ち、アップ・ダウン・ストレンジクォークを考慮することによって、この実験値からのずれが数パーセント以下に削減されることを確認した。依然として残っている小さなずれは、QCDでは無視されている電磁相互作用によるものと解釈される。この結果はこれまでの現象論的計算では不定性が大きかったハドロン行列要素を、格子QCDの数値シミュレーションによって第一原理から高精度で計算できることを示唆している。また、クォークの質量に関しては、アップ・ダウン・ストレンジクォークのダイナミクスを考慮することによってクェンチ近似での結果よりも約25%程度値が小さくなることを見た。QCDの基本的パラメータであり、現象論的計算でも重要なクォークの質量を精度良く決定することができたことは大変意義がある。これらの結果を格子QCDによる研究の分野で最も主要的な国際会議「Lattice 2004」で発表するとともに、他グループの研究との比較、この分野の現状の俯瞰を「ICHEP 2004」で講演した。また、小林・益川行列要素の高精度決定に向けたハドロン行列要素、特に、K中間子のsemi-leptonic decayの形状因子の計算に着手した。
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Nuclear Physics (Proc.Suppl.) (発表予定)