Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2003: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2002: ¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
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Research Abstract |
本研究の特色は,充分によく制御された状態で,微細加工によって作り出されたナノ構造において,干渉効果や多体効果に起因する新しい現象を見出そうとしている点にある。 我々は,AlGaAs/GaAs界面に形成された2次元電子系を,リング形状に加工し,さらに,量子ドットを埋め込んだものを用いている。リングの系は直径1ミクロン程度,量子ドットのサイズは,直径100ナノメートル程度である。量子ドットは「人工原子」と呼ばれることもあるが,典型的な0次元系であり,電子の「粒子」としての性質が反映されるシステムで,中に含まれる電子数を1個ずつ変化させることができる。リング形状に加工した系は,干渉系として役割を果たす。この干渉系によって,量子ドットを通った伝導電子の位相の情報及び,コヒーレンスの量を知ることができる。本年度はこの系において,次の新しい知見を得た。 (1)スピン反転による「部分的な」コヒーレンスの検証 我々は,電子が量子ドットを通過する際に,スピン反転過程によって部分的にコヒーレンスが破られる,という予想を実験的に初めて検証した。実験は,低磁場下,高磁場下,近藤状態,クーロンブロッケード状態といった異なる条件で行ったものである。この研究は,量子ドットの伝導において,スピンが量子コヒーレンスに対して果たす役割を明瞭に示すものである。 (2)クーロンピークの同位相問題 干渉系を用いた実験は,1995年より行われてきた。実験的にはクーロンピークの位相がいつも同じであるが,この「同位相問題」は理論的には未解決であった。我々は,量子ドット内の多準位が関わる干渉効果に注目し,この問題を実験的に解決した。
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