Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
データ同化は物理モデルによる予測とデータによる状態の更新とから成る。今年度はデータによる状態の更新の部分の開発を行い、東海地方のGPS観測データに対して適用した。従来、GPSデータを用いた地殻変動の時間発展の推定では、カルマンフィルターという手法が用いられ、状態の時間変化の滑らかさや断層すべり量の空間分布の滑らかさを支配するパラメータは最尤法を用いて決められてきた。しかし、地表のデータのみで地下の断層運動を推定しているので、断層すべり量の空間分布の滑らかさに関しては決まりが悪かった。そこで、本課題では、これらの平滑化パラメータも断層すべりなどの未知数と一緒に推定する定式化を行い、拡張カルマンフィルターという手法で状態の推定を行った。その結果、平滑化パラメータはより厳密に求まるようになった。この手法を、2000年から起こっている東海地方のスローイベントに対して適用した。用いたデータは国土地理院のGPSデータで、まず国土地理院から提供を受けたデータから不要な拘束条件を除去し、異常な地殻変動が見られなかった観測点を多数選び出して、それらに拘束を与えることで、一点だけの固定点を置くことなく、基準系を決めることができた。その後、2000年以前のデータから定常的な地殻変動や年周変化を推定し、2000年以降のデータからあらかじめ差し引いておいた。得られた結果から、イベントは浜名湖の少し西の地域から始まり、時間が経過するとともに東に移動していく様子がわかった。