Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
Rhodococcus sp. N-771由来の鉄型ニトリルヒドラターゼ(NHase)は、配位子に3個のシステインチオールを有し、そのうち2個のシステイン残基がシステインスルフェン酸(Cys-SOH)、システインスルフィン酸(Cys-SO_2H)に酸化された全く新規な非ヘム鉄活性中心を持つ。これまでに組換え体を用いた生化学的な研究から翻訳後修飾が酵素の活性発現に必須であること以外、具体的な機能は不明で触媒機構も解っていない。本年度は、酵素に添加することで、紫外可視吸収スペクトルに変化を示す2つの基質(2-cyano-2-propyl hydroperoxide : Cpxとイソバレロニトリル:IVN)について生化学的に解析を進めた。Cpxはイソブチロニトリル:IBN試薬中から単離されたNHaseと特有に反応する阻害物質であり、申請者は同定に成功した。その阻害は、酵素を不可逆的に失活させる反応であり、質量分析を用いた解析から、翻訳後修飾のCys-SOHがCys-SO_2Hに酸化されていることが明らかになった。Cpxは、IBNのβ位のプロトンがペルオキシド基(-OOH)に置き換わった化合物であることから、過酸化物の酸化反応であると考えられた。しかし、安定同位体H_2^<18>Oを緩衝液中に用いて測定を行うと、Cys-SOHへの酸素の取り込みは、溶媒中の水からであることが質量分析の結果から明らかになり、一般的な過酸化物の酸化とは異なる反応系であることが考えられた。IBNに類似構造を持つIVNもNHaseと反応して、その途中段階を活性中心鉄と硫黄原子の電荷移動に伴う700nm付近の吸収ピークで追うことができた。また、Cys-SOHがCys-SO_2Hに酸化したNHaseでは、この吸収変化は数週間という時間で維持できた。現在、この基質結合状態の結晶化・構造解析を行い、触媒機構のモデル構築を行っている。