Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
歯車を起振源とする騒音は不快で耳につきやすいため、乗用車や鉄道、風力発電装置などでは非常に重要な要件となっている。歯車装置設計においては、歯のかみあい部に働く振動起振力を歯車装置の静粛性に対する指標として用いる場合が多いが、振動起振力での評価と実際の騒音の不快さはしばしば一致しない。この原因の一つは、騒音に対する人間の聴覚特性が見逃されていることにあると考えられる。本研究では、ギヤノイズの不快さをより正しく評価できるようにするため、振動伝達系のシステム特性が完全に白色となる場合のギヤノイズ(起振力ノイズ表現)を用いる評価法を提案する。この起振力ノイズ表現に聴覚特性を取り込むことで、歯車の製造誤差等によるギヤノイズの不快さの評価を可能とすることを目指す。本年度の研究により次の成果を得た。(1)作成した起振力ノイズ表現データとギヤノイズ発生装置を用いて、ギヤノイズ(起振力ノイズ表現)を発生させ、耳で聞いて、音の大きさや感じを評価する官能評価実験を行ない、生産歯車に特徴的な振動起振力波形と、起振力ノイズ表現の官能評価値の関係を明らかにした。特に側帯波の発生する状況を明らかにし、それが官能評価値に与える影響を明確にした。(2)起振力ノイズ表現を用いて、実際の歯車に存在する圧力角誤差やねじれ角誤差などの歯面形状誤差の種類や大きさが、ギヤノイズに与える影響を明らかにした。(3)人間の聴覚特性を考慮したギヤノイズ評価指標を考案し、その有効性を確認した。